バイナリーオプションで取引する際に、世界情勢の理解は欠かせません。
今回は、世界情勢の中でも「地政学リスク」に焦点を当てて解説していきます。
地政学リスクとは、特定地域が抱えている政治などでの緊張感が高まることで、国際社会に悪影響を与えるリスクのことを指します。
今回はその中でも話題となっているウクライナ情勢について紹介し、ウクライナ情勢が各通貨に与える影響を解説していきます。
・ 地政学リスクについて知りたい
・ ウクライナ情勢について知りたい
・ ウクライナ情勢がバイナリーオプションに与える影響を確認したい
・ 通貨ごとにウクライナ情勢に対する通貨ペアごとの反応が知りたい
バイナリーオプションで取引をする際には、通貨の特徴などを知っておく必要があるので、必ず一度は目を通していただくことをおすすめします。
ちなみに通貨ごとの特徴は以下の記事で紹介しています。
「取引する通貨に悩んでいる」「現在取引している通貨の特徴があまりよく分かっていない」という方はぜひご覧ください。
・ ウクライナ情勢について
・ 各通貨ペアに与えた影響
・ ウクライナ情勢の今後の見通し
・ バイナリーオプションでのウクライナ情勢のトレード方法
ウクライナ情勢について
ではウクライナ情勢について紹介していきます。
現在、2022年4月時点でロシアがウクライナに侵攻し、ウクライナとロシアで戦闘が起こっています。
そもそもなぜロシアがウクライナを攻撃しているかというと、ロシアがウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加入を防ぎたいためです。
旧ソ連からロシアになった際に独立した国はNATOに入っていたのですが、ウクライナはその時加盟していませんでした。
しかし、ウクライナがロシアを恐れ、NATO(北大西洋条約機構)への加入を希望したことで、ロシア側はそれを防ぐために侵攻を開始して、ウクライナを支配しようとしているのです。
ロシア:自分の仲間(ウクライナ)をNATOに取られたくない
ウクライナ:ロシアから守ってもらえる大きな組織(NATO)に属したい
それぞれの意見が対立し、ミサイルなどの軍事攻撃も激化しており、世界では先行き不透明な状況が続いている状態です。
ウクライナ情勢が各通貨に与えた影響は?
ウクライナ情勢が各通貨に与えた影響を確認していきましょう。
影響①:地政学リスクの高まりで、リスク回避姿勢が目立つように
ウクライナ情勢が不透明化していることで、解決の糸口が見えず不透明化していることで、様々なところに影響が出ています。
ウクライナの政治的・軍事的リスク(地政学リスク)が高まったことで、各通貨ペアでリスク回避の動きが見られるようになりました。
安全な通貨へ資金を移動させる動きを指す。
「米ドル」や「日本円」が買われたり、「豪ドル」などが売られる動きを見せる。
リスク回避として分かりやすいものであれば、安全資産として一番に挙げられる「金」ではないでしょうか?
金はリスクが高まったり、景気が悪化したりすると価格が上昇するという特徴を持ちます。
他にも、日本円もリスク回避の際には買われやすくなります。
影響②:ウクライナ関連ニュースで相場乱高下
他にもウクライナ情勢が激化し始めた2022年2月頃は、ウクライナ情勢のニュースが相場の手綱を握っている状態でした。
ウクライナ情勢で何かニュースがあれば相場がすぐに下落したり、ウクライナ情勢で少しでも解決しそうな兆しが見えれば上昇したりするなど、市場が特に乱高下している期間であったといえます。
資源国通貨よりも安定感のあるチャートが特徴的なドル円でもこれくらいの乱高下が目立っています。
現在にかけては次第に落ち着くようになっていますが、2022年以降はウクライナ情勢に大きく影響受けた期間だったといえるでしょう。
これはFXやバイナリーで取り扱う各通貨ペアでも同様です。
ウクライナ情勢が不透明感が増していることで、ユーロが売られ、ユーロドルは過去最低値まで下落していました。
影響③:原油高騰でインフレ加速
他にはロシアが世界有数の資源国であったことで、原油価格などにも影響を与えました。
こちらは2022年以降の原油価格のチャートです。
ロシア産原油の輸入制限をアメリカやヨーロッパ、日本が経済制裁として掲げたことが要因となりました。
供給量が追い付かない可能性から、市場へ出回る原油価格が高騰し、日本でもガソリンなどのエネルギー価格が一気に急騰しました。
日テレニュースより引用
このようなガソリン価格高騰のニュースは記憶に新しいのではないでしょうか?
値下がりしてもなお「172円」と高額であることが分かりますね。
米ドル/円(USD/JPY)への影響
ドル円への影響としてリスク回避の姿勢が目立ち、最初に「日本円」が買われています。
しかしウクライナ侵攻が激化するにつれ、相場は本格的に「緊急事態である」と察知し出し、リスク回避傾向が強まったことで、「有事のドル買い」としてドル円は上昇する動きを見せています。
通常であれば「日本円」が買われるのですが、あまりにも不測の事態が継続したことで世界的に流通しているドルに資金が集まっています。
他にもアメリカ側は利上げなどを行う金融政策を行っているのに対し、日本はゼロ金利政策を取っています。
日米金融政策の違いによって、円安が進行していることもドルが上昇している要因の一つといえるでしょう。
ユーロ/米ドル(EUR/USD)への影響
ユーロドルでは、ウクライナやロシアにヨーロッパが近いことが影響し、ウクライナ情勢が悪化することでユーロが売られます。
地政学リスクがダイレクトに影響しやすい通貨ペアであるため、一気に下落する動きを見せるなど、ユーロ売りが目立ちました。
ウクライナ侵攻を行ったロシアへの経済制裁として、原油の輸入禁止を掲げているユーロ圏。
実はロシア産原油の輸入量は、ドイツを始めとした各国が非常に多いという現状があります。
ですので原油の輸入禁止によるロシアとの関係悪化で、ユーロ圏の景気後退リスクが高まっており、ユーロを売り、ドルを買うような動きを見せています。
またアメリカが利上げなどを行なったことも、相対的にドルが強まっている要因といえるでしょう。
ユーロ円(EUR/JPY)への影響
ユーロ円への影響は、ユーロドルと似ているところがあります。
ユーロに関してはユーロドルと同様、地政学リスクなどが高まることでユーロが売られるようになります。
また、日本円がリスク回避の際に買われる通貨であることが後押しされ、ユーロ円は下落傾向でした。
しかし、2022年3月に入ると原油価格高騰や円安の影響をダイレクトに反映し、上昇しています。
ちなみにユーロ圏であるイギリスのポンド(GBR)も地政学リスク反映しやすいため、ウクライナ情勢などで不透明感が増した際には下落する動きを見せやすいです。
豪ドル/米ドル(AUD/USD)への影響
豪ドルと米ドルのペアでは、豪ドルが資源国通貨であるため、原油価格に影響を強く受けるという特徴があります。
オーストラリアの通貨である豪ドルは、
「ロシアやウクライナからは距離が離れている」
「ロシア産原油の市場に出回る量が減少する」
という理由で資金が集まっています。
ロシア産原油の輸出が少なくなることで、オーストラリアなどを始めとした他の産油国が輸出する原油価格が高騰し、それに伴いオーストラリアの通貨である豪ドルの価値も上昇しています。
ウクライナ情勢の今後の見通し
では今後のウクライナ情勢の見通しについて紹介していきましょう。
見通し①:戦争の長期化
ウクライナ情勢において、ロシアの侵攻は2022年4月現在も、未だに収束の兆しが見えていません。
民間人にも被害を出し、不透明感が増す一方というのが現状です。
ウクライナへ支援を行うヨーロッパ各国なども出てきている上に、本格的に「世界 VS ロシア」の構図が出来上がりつつあり、長期化してしまう可能性も否定できません。
戦争が長期化してしまうと、リスク回避の動きが高まるため「ドル円下落」「ユーロドル下落」「ユーロ円下落」といったような動きが見られる傾向にあります。
また安全資産へ資金が移動する動きもあるでしょう。
見通し②:ドルが強まる
「有事のドル買い」と言われる通り、ドルが買われる可能性もあります。
実際、ウクライナ情勢が緊迫化が続いた際には、ドルが買われるような動きが目立ちました。
また、米連邦準備理事会(FRB)なども利上げを行っており、2022年中に数回の追加利上げを検討しています。
FRBが利上げを行うことで、ドルが買われる動きを見せるようになるのです。
利上げを行う場合、ドルは「買い」
→ドル円上昇
→ユーロドル下落
ただし、日本が利上げを行えばドル円は下落する可能性もあります。
今後は、日本やアメリカの政策金利や金融政策にどのような変更がなされるのか、確認しておくことが重要となります。
再度、戦争などでウクライナ情勢の不透明感が増し、世界経済に緊張が走ってしまった場合、再びドルが買われやすくなるような動きをする可能性もあるでしょう。
見通し③:経済制裁で景気悪化
既にアメリカ、ヨーロッパ、日本などはロシアへの経済制裁を行っています。
経済制裁は直接ロシアへ致命傷を与えるようなものではなく、影響は少ないとされていました。
そこで、ウクライナへの攻撃を行うとロシアに対し、追加制裁を求める声も出てきているのです。
追加制裁を行うことは「諸刃の剣」となる可能性もあり、制裁を行った国自体にも景気の悪化が懸念されます。
1. 国際的決済ネットワーク「SWIFT(スウィフト)」からの一部排除
2. ロシア中央銀行、プーチン大統領などの資産凍結
3. ロシアに対する輸出入制限
4. 関税などの待遇を撤回(最恵国という位置づけを格下げ)
これらの制裁の影響で、原油価格の急騰や物価の高騰により、自国の製造業や消費活動も滞る可能性が考えられます。
物価が上昇し、景気悪化が再度訪れる懸念があるのです。
見通し④:原油高
ウクライナ情勢の不透明感が高まることで、原油価格が高騰を続ける可能性も考えられます。
3ヶ月ほど前は1バレル70円台であった原油価格は、今や100円台まで上値を押し上げています。
前述した戦争の長期化などが起こった場合には、もっと価格が高騰していく可能性も十分考えられるでしょう。
ロシアもブルガリアやポルトガルへロシア産のエネルギー資源の輸出を行わない、などの報復を行うことも明らかになっています。
産油国であるロシアが渦中にいることで、今後も原油を始めとしたエネルギー価格がウクライナ情勢の進退に影響していくことは想像に難くないでしょう。
ウクライナ情勢でのバイナリーオプションのトレードは?
ウクライナ情勢が注目、懸念されている際のトレード時のポイントを紹介していきます。
ポイント①:取引金額は少額に抑える
基本的にリスク回避姿勢を崩さないトレードを心がけるようにしましょう。
先行き不透明感が高まって価格が乱高下する可能性もあるため、バイナリーでの最高損失額は取引金額のみに限定されているものの、なるべく少額で取引した方が無難です。
ポイント②:ドル買いメイン
他にも、ドル買いなどをメインシナリオとして想定することも忘れないようにしましょう。
もしもドル以外の通貨を取引する場合、再度「有事のドル買い」が発生し、資金がドルへ逃げる可能性も視野に入れながら、注意を払っておく必要があります。
ポイント③:ロシアから地理的に離れているものを選択
また資源国通貨を取引したい場合には、オーストラリアやニュージーランドなどを選択肢に入れておきましょう。
地理的に遠いことでロシア関連ニュースの影響を受けづらいと想定できます。
まとめ
今回はウクライナ情勢と各通貨ペアに与える影響などについて紹介してきました。
バイナリーオプション取引は、「比較的短い時間軸で取引する」「損失額が限定されている」などのメリットがあるため、大きく影響を与えることは考えにくいといえるでしょう。
しかし、相場全体や取引したい通貨ペアがどのような方向性を持って動いているのか、「ファンダメンタルズ分析」をしておくことで、取引の際に役に立つのではないでしょうか?
ちなみにファンダメンタルズ分析とは、国などの経済状況から今後の価格を分析していく手法です。
ウクライナ情勢の長期化に備えて、ニュースを確認し、各通貨ペアへどのような影響を及ぼすか考える習慣を身に付けておきましょう。